オリジナル学園小説「田舎野学園物語」を公開中。
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2007.05.02 Wednesday... -
...日々雑記
どうもー!GWを10連休にしたいがために10月にある文化祭の振替休日をわざわざ昨日今日に持ってきているだめ女子大に通っているchiです(長)
田舎野学園物語、読んでもらえているのでしょうか!?ソワソワ…とりあえず、自分の高校時代なんかを思い出しながら、書いています!
ちなみに、私自身は高校時代吹奏楽部でして…かなりの、部活校でした。ココだけの話(ココだけって…)田舎野栄光高校は、私の出身校をイメージしております。人数だけは馬鹿みたいに160人くらいいて、やれ系列校の入学式、近隣の中学校のクリスマス会、ナントカ法人会の演奏会…ナドナド、いろんなとこに首を突っ込んでは中途半端な演奏して帰っていく、なんかおせっかいな部活でした(たぶん依頼されていってたんでしょうけど…)
この先、ちょっとずつ楽器や音楽をからめつつ話を進めていこうと思っています。からめるっつっても、ワキ役的にポンポンと出てくるだけですが…(笑)

さてさて、今日は裏ページにアップするためのモノをもくもくと作成中ですので(うはー!)本編はちょっとお休み…
そして現在バイト休職中の身のクセして、GWはガッツリ友達と遊ぶ約束しまくってるので、エライことになっています。か…金がーー!(泣)

あと映画やらDVDやら観たくて、ウズウズしています。漫画喫茶ってDVDも観放題って本当ですかね!?漫画喫茶はまだ未開の地なもので、足を踏み入れられずにいます。かといって、友達とせっかく遊ぶのに漫画喫茶行くのもアレなんで、結局いつまでたっても行けない…うぅ…

とにかく、バイト決まるまではいろいろ保留しなければ!
服も2ヶ月くらい買ってない…うーん…
2007.05.02 Wednesday... comments(9)
...田舎野学園物語 1


「絶対みんな俺の意見に賛成なハズなんだけどなぁー…」
タカシは自分の頭をぐしゃぐしゃと掻きながらちぇ、と舌打ちした。
実際、僕もそう思う。みんなの表情を見れば何となく分かる。みんな、「友達同士」で組みたいのだ。
でも、岡田淳紀の意見にはなかなか逆らえない。別に彼は威張り散らしたり、誰かを仲間はずれにしたりだとか、そういうことをするわけではない。ただ、なんとなく彼には逆らいがたい雰囲気があるのだ。どこの学校にだってそういう人は1人か2人は必ずいるものだ。

結局、メアリー先生の提案によって、班決めの方法は決められた。
最初に友達同士で2人組を作って、あみだクジで当たったペア同士で4人班を作るというものだ。タカシと岡田淳紀の意見を両方取り入れた、メアリー先生曰く「画期的な方法」だ。
タカシは当然のように僕とペアを組んでくれた。中学までは余り物どうし、でいつも組まされていた僕としてはそれはものすごく嬉しかった。
柿木さんは野桜さんと組んでいて、タカシは「ユズと一緒の班で、シマとは別になりますよーに!」なんて言ってあみだクジに名前を書き入れていたけど、2人がペアを組んでる時点でそれは無理だったからムチャクチャなことだった。でも僕もとりあえず柿木さんとは一緒の班になりたかったから、タカシと一緒に心の中でお祈りすることにした。

結果は…僕たちは柿木さん達とは違う班になった。僕たちは水城さんと桐生さんという、2人とも制服を改造してなにやらヒラヒラしたレースやごてごてした装飾をつけたいわゆるゴスロリみたいな格好をしている、ちょっと変な子達と一緒になった。
それだけでもずいぶん僕は落ち込んだのに、なんと柿木さん達はあの岡田淳紀と一緒の班になっていた。岡田淳紀のペアは、格好良くてすごく優しい、岡野尚史という奴だ。男女ともにウケがよくて、彼に関するイヤな噂は聞いたことがない。柿木さんだってきっと、岡野尚史のこと、好印象に思っているんだろうな…
「ちぃっくしょー!なんで!?なんでっっ!?」
行動班の発表がされて僕がぼんやりとしている隣でタカシがぎゃあぎゃあ喚きだした。
「おいっ!ユタ!なにボォっとしてンだよ!」
いきなり話しかけられて、僕はびくぅっと大げさに反応してしまって、危うく椅子からずり落ちるところだった。
「な……な…に…?」
「何?じゃねぇよ!見ろ!黒板を、見ろっ!!」
タカシに促されて、僕はぱっと黒板に視線を移した。
そこには、部屋割りの班が書かれていて…
ーー五味・犬神ペア 102号室
ーー岡田・岡野ペア 102号室
そう、書かれていた。
「…………」
数分前まではものすごく楽しいものになる予定だった校外学習は、どうやら僕にとって最悪のものになってしまったようだった。

「……はぁ…」
僕はガックリとうなだれながら、月明かりに照らされる田舎道を、納品の品物を積んだ自転車を押しながら歩いた。
いつものようにコマ楽器店の前につくと、自転車を止めて、荷台にくくりつけてあるダンボール箱の紐を解き、よっこらしょ、とダンボールを持ち上げる。
「お疲れ様でーす!納品に来ましたー!」
閉店直後のコマ楽器店内には、やっぱり人の気配がない。もっとも、昼間だって人がいるのかどうか怪しいところだけれど。
「すみませーん!」
再び、店の奥に向かって声をかけてみる。だが、返事はない。
「……店、まだ鍵かかってないし…帰っちゃったってことはないよなぁ…」
そう思って、少し奥の方まで足を踏み入れてみる。すると、微かに、店の奥の方から耳慣れない音が聞こえてくる。
(楽器の…音…?)
それは確かに何かのメロディーを奏でている。音楽に疎い僕は、何の曲なのかも、何の楽器の音色なのかも分からない。でもその音は、高すぎず、低すぎず、柔らかに耳の中に響いてきた。温かくて、でも、それでいてどこか哀愁を帯びたような、繊細な音色だ。
音がするのは、レジカウンターの奥にある扉の向こうだ。扉はぴったりと閉まっているから、楽器の音は微かにしか聞こえてこない。
僕はちょっぴり戸惑いながらも、ダンボールをレジの横に置き、そっとドアノブに手をかける。ゆっくりと回し、音を立てないように慎重にドアを押すと、ドアはキィ…と微かな音を立てて開いた。

中にいたのは…柿木さんだった。僕の方に背中を向けているのでよく見えないけど、何か、細長いスラリとした感じの管楽器を吹いている。柿木さんよりもうんと大きく見えるその楽器は、焦げ茶色をしていて、大きな一本の木の枝をナナメにして持っているような感じだ。僕が知っている楽器ーーもっとも、僕はリコーダーくらいしか知らないけどーーにはない、始めて見る楽器だった。
でもその音色は、聞いていて思わずため息が出てしまうほど澄んだ、ちょっぴり切なげな音色だった。
僕はしばらく、納品に来たのも忘れてその音色に浸っていた。
2007.04.30 Monday... comments(0)
...田舎野学園物語 1


それからというもの、柿木さんはことあるごとに僕に話しかけてきてくれた。その度に僕は「うん」とか、「そう?」とかしか言えなかったけど、それでも柿木さんは僕ににこにこと笑いかけてくれた。
僕は生まれて始めて「友達」というものができた。
クラスにおいて、僕はいつもだいたい4人でつるんでいた。僕と、柿木さんと、僕の前の席のタカシと、柿木さんの前の席の野桜さんだ。

タカシは、五味昂、といって、入学式の日に僕にちょっとだけ話しかけてきた奴だ。「五味君、」と僕が呼ぶと、「やめろよゥ、俺、名字で呼ばれるの嫌なんだ。」って言った。曰く、「だってよ、ゴミくんだぜ?俺、生ゴミじゃねーし!」だとかなんとか。
だから下の名前で呼ぶことにした。でも「タカシ君」と呼ぶと「君付けで呼ぶな、きもちわりー!」と怒るので、呼び慣れないけど「タカシ」と呼び捨てで呼ぶことにしている。
タカシは柿木さんのことが好きみたいで、その上僕と柿木さんがすごく仲がいいって思っているらしく、いっつも僕に柿木さんのことを聞いてくる。でも僕だって柿木さんのことをよく知ってるわけじゃないから、いつも返答に困ってしまう。
そのくせ、タカシは柿木さんのことをもう「ユズ」って呼んでいる。柿木さんも柿木さんで、タカシのことを「タカシ」って呼んでる。なんだか恋人同士みたい。と思うと、柿木さんを取られたような気がして、ちょっと僕は寂しい気持ちになる。

野桜さんは、野桜志摩子、といって、柿木さんと仲が良い。
タカシとは中学から一緒だったみたいで、いつも授業中寝ているタカシに消しゴムを投げたりして起こしている。柿木さんが言うには、「シマちゃんはタカシの事が好きなんだよ。」らしいんだけど、僕にはよくわからない。
と、いうのも、野桜さんはすごく物事をストレートに言う人だからだ。一度、僕に向かっていきなり「ねぇねぇ、ユタってユズのこと好きなんでしょ?」とか、言ってきたんだ。もちろん僕は真っ赤になっちゃって何も言えなかったけど、唯一の救いはその場に柿木さんがいなかったことだった。
そんな野桜さんがタカシのことを好きだとしたら、タカシに消しゴムを投げつけたり、あーだこーだ言って喧嘩したりしないで、素直に「好き」ってことを伝えると僕は思う。だいたい、好きな人と喧嘩したいだなんて僕は考えられないし。
そんなことを姉ちゃんに言ったら、「あんたは乙女心も恋心も全然分かってないのね。」なんて言われた。そんなもんなんだろうか。

「はい!みんな注目ーーーっ!」
メアリー先生がばんばんと教卓を叩いた。黒板には黄色のチョークで大きく「校外学習 班決め」と書いてある。

もうすぐ校外学習がある。
田舎野学園系列で所有している宿泊施設があって、系列の学校はその施設を校外学習に使ったり、部活の強化合宿に使ったりできる。今回の校外学習は、その施設に2泊3日で泊まりにいく、入学後一番最初のビックイベントだ。
初日は、ハイキングと山登り。2日目には、河原で飯ごう炊飯体験とバーベキュー。夜はキャンプファイヤーと、きもだめし。この時の班割りというのが、男子2人、女子2人のグループで組む。なんだか中学校みたいだ。
宿泊施設の部屋割りの班は、同性同士の4人ずつだ。
3組はちょうど24人なので、4人で割るのがちょうどいいのだ。

「班決めなんだけど、みんな、どうやって決めたい?」
メアリー先生はぐるっとみんなを見渡す。みんなは隣同士の子とひそひそと何か相談したり、目と目でアイコンタクトをとったりしている。
僕は絶対に、いわゆる「好きな人どうし」の決め方がよかった。だって、いくらタカシとかと仲良くなれたとはいえ、まだまだ僕はその他の喋ったことのない人たちとは到底上手く喋れそうにないからだ。それに…
「きもだめし、だって。あたし、そういうの苦手なんだけどなぁー…」
柿木さんが、ちょっぴり肩をすくめて野桜さんに話している。
そう、こういうイベントは、急接近できるチャンスなのだ(って、タカシが言っていた)。柿木さんと同じ班になれれば、いっぱい一緒の思い出を作れる。
「はいはぁーーいいっ!」
と、タカシが勢いよく手を挙げた。
「はいじゃあ五味くん。」
「オレ、仲いい人同士で決めればいいと思いまーっす!」
ちょっと間延びしたようなタカシの声に、クラスの大半の人がうんうんとうなづいた。さすがタカシ。みんながちょっと言い出しづらいこともちゃーんと言ってくれる。
「そうねー。その方が楽だし、みんなもそれでよさそうだし、いいかな?」
(よっし…)
と僕が心の中でガッツポーズをしようとした、その時…
「先生!」
他の声がみんなの注目を集めた。

「僕は反対です。だって、まだみんなこのクラスになったばっかなんだし…せっかくだから、仲良しグループなんかで固まらないで、いろんな人と友達になれるように、くじ引きとかで決めた方が、いいと思いますが?」
その声の主は、岡田淳紀。一流企業の御曹司だとかなんとか。そんなにカッコいいわけじゃないけど、ズバ抜けて頭が良いし、タカシ曰く、「ちょっとハスキーな低音ボイスと巧みな話術で女子をクラクラにしている」そうだ。
そんな奴がなんでこの落ちぶれ田舎野学園にいるのかと言えば、「このくらいのレベルの学校には、どんな人たちがいるのか興味があるから」だそうだ。まったく鼻持ちならない奴だ。
「ちぇ…あいつ、自分が友達いないからあんなこと言ってンだよ…」
タカシが椅子に横向きに腰掛けて、僕に耳打ちをした。
「くじ引きなんかにして、あいつと同じ班になったら最悪もいいとこだっつゥの!」
タカシは苦々しい顔をして、僕の机の上にあった消しカスをぴん、と指ではじき飛ばした。その消しカスは野桜さんに当たって、タカシは野桜さんに消しゴムを投げつけられた。

クラスは岡田淳紀の意見のせいで、複雑な空気の中固まってしまった。
2007.04.30 Monday... comments(0)
...田舎野学園物語 1


僕はじっと下を向いて、黙っていた。彼女が次になんて言うか、あるいはなんて言われても、耐えられるように、じっとうつむいて黙っていた。
そして、聞こえたのは。
くすくすっと、笑う声。
「なぁんだ、そんなことだったの?」
「え…」
驚いて顔を上げると、そこにはふんわりと笑う柿木さんの顔があった。
「あ、ごめん…えっと、馬鹿にしてるとか、そういう意味じゃないよ?」
僕はよっぽど変な顔をしちゃったんだと思う。柿木さんは少し困ったようにして、また例のはにかんだような笑みを浮かべた。
「あたし、知らないうちに犬神君に悪いことしちゃったのかなって思ってね…でも、そうじゃないんだよね?だから、安心しちゃった…」
彼女はふふっと笑って僕の顔をひょいと覗き込んだ。
「犬神君は、ちょっとアガりやすいだけなんだね?」
たちまち僕の顔は真っ赤になってしまった。
「え……うん…まぁ…」
そう言って、ちょっとびっくりした。僕、普通に話してる…
いや、普通というにはまだちょっと遠いかもしれないけど、少なくとも、前のように全く喋れなくなる、という感じではない。何かつっかえがとれたような、そんな感じ…
「じゃあ、改めて…柿木柚子梨ですっ!ユズって呼んでね。」
そう言って彼女はにこっと僕に笑いかける。
「え…あ…は……はい…」
僕はどきまぎしながらも答える。
「犬神君も、名前、教えてよ。」
彼女が少しがっかりしたように言う。
そうだった。名前を言われたら、こっちも言わないと…
「い…犬神…遊汰…」
「ユタって言うんだ!じゃあ、これからはユタって呼ぶね!ユタとユズで、ちょっと似てるね。」
えへへっと笑って、彼女は鞄を手に取った。
僕はますます真っ赤になっていく。
「じゃあまた明日ね、ユタ。」
そう言って手を振り、柿木さんは教室を出て行った。

一人教室に残されて、僕はしばらくその場にぼぉっと突っ立っていた。」
(僕は、さっき、まぎれもなく柿木さんと、会話してたんだよね…)

ーー「犬神君は、ちょっとアガりやすいだけなんだね?」

僕はどうしても柿木さんにちゃんとしたことを伝えたいと思った。
そしたら、きちんと言葉が出た…
今までは、どうせ話せないって逃げてばかりいたから、だめだったんだ…
柿木さんは、緊張しておかしくなってしまった僕を見ても、馬鹿にしなかった。それどころか、また笑いかけてくれた。
(ちょっとアガりやすいだけ、か…)
そう思うと、なんだか心が軽くなったような、そんな感じがした。自分は異常なわけじゃない。人よりちょっと緊張しやすいだけ…

ーー「じゃあまた明日ね、ユタ。」

「また、あしたね…ユタ…だって…」
僕は一人でふふっと笑い、ばっと教室から駆け出した。
なんで走ったのかは分からない。でも、とにかく走りたかった。なんだか嬉しくて、むずがゆくて、それで、すごく幸せだった。

家で夕飯を食べているとき、姉ちゃんが僕を不振そうに見つめ、
「なによユタ、今日は入学式だったっていうのにえらいご機嫌じゃない。」
と、ご飯をよそいながら言った。
「そう?」
僕はあわてていつも通りの表情に戻そうとしたけど、いつもどういう表情でご飯を食べてたのかわからなくて、結局変な顔になってしまった。
「変なの。いっつも入学式から帰ってくるといつもの三割増くらい疲れた顔してんのに。なんかあったの?」
「別に。何もないよ。」
そう言って僕は食器を片付けて、さっさと部屋に退散することにした。
「変なのー。」
姉ちゃんはまたそう言って、テレビをつけてニュースを見始めた。
2007.04.28 Saturday... comments(0)
...田舎野学園物語 1


体育館に戻ると、3組のみんなは適当に列を作ってぞろぞろと教室へ向かうところだった。
僕は慌てて列の後ろにくっつき、後をついていった。列の中に柿木さんの姿を探したけど、柿木さんは背が低いせいか見当たらなかった。
「おい、ちょっと、お前さぁ、」
急に肩をがしっと捕まえられた。
「うひゃあっ!!?」
僕は素っ頓狂な声を上げてばっとその手を振り払った。
「なんだぁ?お前ケッペキなのかー?」
そこにいたのは、僕よりも少し背の高い男の子だった。肌はちょっと日焼けしていて浅黒く、少し長めの髪をワックスでくしゃくしゃっと無造作にセットしていて、染めているのか焦げ茶色っぽい。目は眠そうにとろんとしている。
「んま、どーでもいいけどよォ…」
別に気にも留めていない、という風に彼はくしゃくしゃっと一度自分の髪をかき回し、僕の方にぐいっと近寄ってきた。
「な、お前さ、さっき一緒に話してたオンナノコと、仲いいのか?」
少し声を殺して、でもちょっと楽しげに、そいつは話しかけてきた。
「…?」
僕が黙っていると、彼は勝手に話を続けた。
「あの子、メチャクチャ可愛いじゃんかよぉ!な、な、メアドとか、知ってんの?」
僕は彼女とは全然関係ないんだ…と言いたかったが、案の定、僕の舌は既にふくれあがっていて、喋ろうにも喋れる状況ではなかった。だんだん顔が熱くなってきて、つ、と冷や汗が顔を伝った。
だが、次の瞬間。
「タカシッ!ちょっとあんたどーしてあたしを置いていくのよっ!」
よく通る大きな声が僕を救ってくれた。タカシ、と呼ばれたそいつはびくっとして声の方を振り返った。
「もうっ!あたしがちょっと他の子と話してる隙にいなくなるんだから!」
長い黒髪をポニーテールにした、いかにも利発そうな女の子が、タカシの耳ををぐいと捕まえていた。
「いででで!ギブギブ!…っつーかいいじゃんかよ別に!」
痛がるタカシをもろともせず、彼女はそのままタカシをひきずって列の先頭の方へと歩いて行ってしまった。僕はほっとしたような、腑に落ちないような、複雑な心境でまた列の最後尾にのろのろとくっついて行った。

教室は既に席が決められていて、僕は一番窓際の席になった。隣が柿木さんだったから、僕はどきっとしたけど、柿木さんは前の席に座っている女の子ーーさっきタカシを引っ張って行った子だーーとおしゃべりしていて、僕の方は見なかった。ちょっと安心したような、でもなぜか寂しいような、複雑な気持ちが僕の中で渦巻く感じがした。
僕の前の席はタカシだった。さっき引っ張られた耳が痛いらしく、耳を押さえて机に突っ伏したまま動かなかった。
クラスの人数は24人で、男女12人ずつ。随分少ないせいで教室ががらんと広く感じる。
先生の名前はメアリーといった。思いっきり日本人顔なのに、「これでもハーフなんです」と変に威張りくさった感じで言った。熱血教師、というかんじで、なんだか長い話を延々としていたけど、ほとんど誰も聞いていないようだった。

こうして、高校入学の第一日目は終わった。
僕はさっさと帰ろうと思い、席を立ったところで柿木さんに呼び止められた。
「犬神君。」
僕は思わず鞄をぎゅっと握りしめた。彼女はおずおずと僕の方へ近付いてきた。
「さっき、ごめんね。いきなり、話しかけたりして…あたしのこと、怒ってる…?」
すごく、寂しそうな声だ。ごめんねだなんて、柿木さんが謝ることじゃないのに…悪いのは、僕の方なんだ。
でも、やっぱり、そう言いたいのに、口が思うように動かない。
「………ぃ……」
声を出そうとするたびに顔に血が上っていく。頭から湯気が出ているんじゃないかというくらい、僕は顔の火照りを感じていた。
「なんか、一応初対面なのに、図々しかったよね、あたし…ほんと、ごめん…」
柿木さんは更にしゅんとしたように言う。
僕が黙っているから、きっと怒っていると思っているんだろう。でも、それは違う。違うんだよ。僕は、柿木さんに話しかけてもらえて嬉しかったんだ。でも、思うように喋れないんだ。だから…だから…
「じゃあ、帰るね…」
そう言って、柿木さんは自分の鞄を手に取った。行ってしまう。
僕の脳裏に、柿木さんのはにかんだような笑顔が、すっと浮かんだ。
また、笑いかけてほしいのに…

「……っち、違う!ちがうよっ!……ちがうんだ…!」
自分でも、びっくりするくらい大きな声が出た。最初の声が出ると、僕の口からは、堰を切ったように言葉が溢れ出してきた。
「違うんだよ…僕は、ぼくは、話しかけてもらえて、嬉しかった!笑いかけられて、すごくすごく嬉しかった!でも、僕は上手く喋れないんだ…緊張しちゃうと、なんだか、うまく……しゃべ…れ…っふぅ………は…ぁ…」
一気にまくしたてたせいで、息が切れた。今や僕の顔はゆでだこみたいに耳まで真っ赤になってたし、顔や手のひらには汗をびっしょりかいていた。心臓が喉元までせり上がってきているみたいにバクバクと音を立てていた。

同世代相手にこんなに喋ったのは初めてだった。いや、多分誰に対してもこんな風に喋ったことはなかったと思う。
でも僕は、喋ってしまったことに早速後悔していた。だって、初対面同然の相手に、いきなり「笑いかけられて嬉しかった」だなんて言っちゃって…なんて気持ち悪いんだろう。それに、緊張すると上手く喋れないだなんて、明らかにおかしい。どうしよう。柿木さんはきっと僕のこと、気持ち悪がってる。
そんなことを考えている僕のことを、柿木さんは驚いたような顔でじっと見つめていた。
2007.04.28 Saturday... comments(0)